裁判員制度体験研修に行って来ました♪08/04/01
裁判所で行われた、裁判員制度体験フォーラムに参加しました。
以前に、
制度についての講義、そのあと模擬裁判を見学、というコースは参加した事がありますが、
模擬裁判を見学して、その事件について評議をする、というのは初めてです。
番号札と一緒に、模擬裁判の起訴状、実況見分調書、供述調書、診断書などを受け取って、
法廷に入りました。
起訴状には、公訴事実は、
20歳の男性が、早朝の路上において、36歳の男性に顔面を殴るなどの暴行を加え、
金を出せ、出さないと殺す、などの脅迫をして1万円を奪った。
その際に顔面に1週間の打撲を負わせた。
罪名及び罰条は、
強盗致傷 刑法第240条前段
とあります。
起訴状?公訴事実?強盗致傷?前段?
推理小説やドラマの中で見た文言が並んでいますが、
こんな言葉が当たり前に使われながら、裁判は進んでいきます。
検察官の冒頭陳述、弁護人の冒頭陳述、私にとってはドラマの世界でしかない場面が、
目の前で始まっています。
確かに、今のこの法廷は模擬であって本当の事ではないのですが、
知らない世界に足を入れた私には、
ほー、ふーん、へー、あらーの連続です。
被告人はとても感じのよさそうな青年ですし、
原告は、チョッと一癖ありそうな感じがします。
それだけで、
この青年は本当に人に暴力を振るったんやろか、
相手のほうが強そうやけど、やり返しはしなかったんかなあ、
そんなことも思ってしまいます。
裁判員は、目の前で行われている裁判だけで判断をすること。
裁判員は、その事件に関する世間の風評に惑わされないこと。
難しいです。
青年は、婚約者とけんかをして家を飛び出して、むしゃくしゃしているところに、
酒に酔った男性に目をつけられたと思って、
殴りかかり、つい行きががり上、金を出せと言ってしまった、
計画的ではない。
歩いていたら急に殴りかかられて、建物のガラス窓に押し当てられて、
声を出すことも出来ず、1万円を渡して逃げた。
その近くの病院ですぐに診断書を書いてもらった。
押し当てられた建物のガラスは、ひびが入っている。
建物の持ち主からは被害届をもらっている。
青年は、結婚も決まり就職も決まり、楽しいはずの時期になぜこんなことをしたんかなあ。
診断書や被害届などをエライ早く準備してはるんやなあ。
次々に証拠として出される現場の見取り図や、現場の写真などを見せながら、
裁判は続きます。
1時間半くらいの時間が経ったでしょうか、2時間くらいだったかもわかりません。
懲役6年!?ついウトウトしかけていた私の目はパッと開きました。
検察官からの求刑は、
懲役6年!
この程度の事件で6年も!?吃驚しました。
裁判は終わりました。
そしてそのまま、入廷時にもらった番号札の部屋に入ります。
今から評議が始まります。
その部屋に入ったのは、男性が5人、女性は私だけ、そして男性の裁判官が1人。
身体が沈んでしまいそうな立派な椅子が、楕円形のテーブルを囲んでいます。
部屋の隅には、紙コップとお茶が入ったポットが置かれています。
男性5人も裁判官も、とても温和なそうな方ばかりで、
年齢も皆さん私と同年輩か少々上の中高年です。
いかがでしたか?と切り出された裁判官の言葉に、
誰も、うーーーんと言うばかりで、全く声が出ません。
実は、私自身も自分にびっくりしていました。
もし自分が裁判員になったとしたら、ちゃんと意見も言えるし、評議も出来るわ、と
実は実は思っていたのです。自信があったのです。
ところが、ものの見事に、言葉が出ません!びっくりです。
あれだけひとつのことに対して、検察、弁護人の両方から意見を言われたら、
ひとつひとつに、うなずいてしまいますし、
きっとどちらも本当のことを言われているのだと思いますし・・、
ああ全く意見どころではなく言葉が出ません。
男性陣も皆さんそのようです。
しばらくうーーん、うーーんしか出ない中で、
「これは強盗傷害ですかねえ、恐喝傷害ではないんですかねえ」
と、1人の男性がやっと声を出されました。
「そうですね、そこを評議しましょう」裁判官が温和な顔で言われます。
きょうかつ?ごうとう?
それはどう違うの?うーーん。
そんなレベルの私は、黙って聞いています。
それでも皆さんはぽつぽつと、いろんな意見を出されはじめました。
おおよそ皆さんの意見は、
強盗かなあ、それ程の事件ではないだろう、というのが方向のようです。
私もそう思っていました。
「この事件で懲役6年というのは、きついと思いますが・・」
私もやっと声を出しました。
「あ、この事件は強盗傷害での求刑ですから、その場合の最低の刑期が6年なのです。」
「ああ、そうなのですか」
「あ、わかりませんね。罪名によって最低の刑期が決まっているのです。では、その説明をしましょう。」
「すみません」
「いえ、いいんですよ。わからないのは当然ですから」
温厚な裁判官は丁寧に説明を始められました。
要するに、まず罪名を決定することが必要であって、刑はその罪名によって決まっている、
それを検討していく。
しかしなかなかその罪名が決まりません。
今まで1人黙っておられた男性が手を挙げられました。
「皆さんの意見は、被告の青年の姿かたちからも、
たいした事件ではないように思われているようですが、
似たような経験をした者から言わせていただきます。
以前ですが、全くこの事件とよく似た形の被害を受けました。
突然に殴りかかられた恐怖は、言葉に表せません。」
またまた沈黙です。
「被害者との間で、示談が成立していて、被害者からの嘆願書も出ているのに、
どうして刑罰が必要なのですか」
単純な質問は私です。
「示談は別なのですよ。では、その説明をしましょう」
「すみません」
「いいんですよ、疑問なことは何でも言って下さい」
このような問答を繰り返しながら、評議は続けられました。
裁判官は誘導することはなく、質問には丁寧に答えていただけます。
結局結論は出ないまま時間が来て終わりました。
2時間は過ぎています。
実際の場合は、又続きの評議をすることになります。
今日のメンバーは私以外は皆さんしっかりされた方ばかりでしたが、
私のように何も知らない者ばかり、ということもありうるわけです。
質問をするたびに、説明をしていただきます。
わからないから当然なのですが、これは相当大変なことだと思います。
それだけで毎回時間を取ることになります。
来年、平成21年5月27日までにスタートするというこの制度、
時期早々だという意見が出ています。
時期早々と言うよりも、いつからはじめても大変なことだと思います。
しかし、この制度の目的は、
普通の生活者の視点を裁判に導入すること、これが第1にあります。
だからそれでいいのでしょう。
それがいいのでしょう。
帰りに、裁判官氏とそんなことを話していました。
「私の周りに裁判所に世話になる人はまずいません。普通はいませんよねえ。
裁判官は立派な立場なのかと思いますが、
毎日毎日、争いごとばかりの中で生活されるのって大変ですねえ。」
温厚な裁判官氏は、にこやかに笑っておられました。
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